永久歯列期の矯正治療とは
永久歯期におけるガタガタの歯並び(歯列不正)や上下あごの咬み合せの不調和(不正咬合)は、多くの場合小児期における口呼吸・舌の癖・態癖・姿勢などのお口のまわりに関わる筋肉の機能不全が原因と考えられています。
このような習癖は永久歯期になっても変わらず続けていることが多く、将来さらなる歯列不正および不正咬合を増長するだけでなく、ひいては虫歯や歯周病の原因にもなりかねません。またあごの関節の不調和(顎関節症)、睡眠時無呼吸症候群、偏頭痛、肩こり、背中の痛みなど、不調は身体全体に及ぶことも懸念されます。もちろん見た目の不調和からくる精神的負担も見逃すことはできません。
以上のことから、できるだけ永久歯を抜かずに舌や口唇の機能を回復しながら鼻呼吸ができる環境づくりをしつつ、きれいな笑顔で健康的な歯並びを実現していきます。ひいては将来にわたっての健康増進と質の高い生活が期待できます。
永久歯列期の矯正治療の目的
永久歯の正常な歯並びの咬み合せの確立。正しい舌、口唇閉鎖と鼻呼吸の確立、ひいては明るい笑顔と生涯にわたっての健康と質の高い生活へのサポート。
永久歯列期の矯正治療の対象者
12歳前後以降の永久歯列完成期、あるいは1年前後で永久歯列完成が予想される児童から成人で、以下のような不正咬合の方。
永久歯列期の矯正治療のメリットデメリット
メリット
- 12~15歳前後までならば、残された成長を考慮してアプローチした治療が可能です。
16歳以降、成人ケースについては、骨格的な成長の影響が無いので歯牙のみにアプローチした治療が可能です。 - 綺麗な歯並びに伴って、顔の輪郭の形成が綺麗になります。
- きれいな歯並びにより、笑顔が素敵になります。また、気持ちも明るくなり向上心も芽生えます。
- 歯並びが良くなることでブラッシングがしやすくなり、虫歯予防、歯周病予防ができます。
きちんと咬める事で、食事がしやすくなり、食生活が充実するだけでなく、脳の活性化にも良い影響を与えます。
デメリット
- 成人ケースにおいては、治療開始前に親知らずを抜歯してもらう場合があります。
- 症例によっては、やむを得ず便宜的に小臼歯の抜歯が必要な場合があります。
- 稀に歯の移動量が多いケースにおいては、一部の歯の歯肉が少し下がったり、歯根の先が少し丸く吸収したりすることがありますが、咬み合わせや歯並びに影響することはほとんどありません。
- 部活や塾、習い事などで毎月きちんと通えないと治療期間が長引くことがあります。
- 治療後、長期にわたって来院していなっかたり、保定装置をあまり使用しなかった場合、咬み合わせや歯並びの一部が後戻りすることがあります。
永久歯列期の矯正治療を行う理由
小児のころに歯並びが良かった、あるいは悪いことに気づかなかった、永久歯に全部生え変わるまで待つように言われた、物心ついたころから気にしていたが踏み切れなかった、最近歯並びが悪くなったなどの様々な理由で、受診されたと思います。咬み合わせや歯並びが悪いことで見た目にによる精神的な負担、機能面の不具合による身体的な負担などにより生活に支障をきたしかねません。
きれいな歯並びと正しい咬み合わせに回復することで、将来にわたっての健康増進と質の高い生活を実現していきます。
永久歯列期の矯正治療に使用する装置
永久歯列期の矯正治療に関するよくある質問とその回答
治療期間はどれくらいですか?
永久歯列全体を治療する場合は平均2〜3年というところです。治療期間は年齢とともに長くなる傾向があり、20歳を過ぎている患者さんなら、3年前後かかることも多くなります。
矯正歯科治療は何歳まで受けられますか?
歯を動かすうえで、歯ぐきや歯槽骨(しそうこつ/歯を支える骨)などに問題がなければ、50代や60代でも矯正歯科治療を受けることができます。歯周病のような病気や顎関節症(がくかんせつしょう)があると、まずその治療を優先させることになります。
矯正装置をつけて金属アレルギーが出ることはありますか?
矯正歯科治療に用いられる金属材料にはアレルギーの原因となりうるニッケルやクロム等が含まれていますが、矯正装置が原因のアレルギー発症の報告は非常に稀です。当クリニックでは、アレルギーになりにくいマウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)での治療が可能ですのでご相談ください。
矯正装置をつけると、発音や食事がしづらいと聞きますが、どの程度でしょうか?
慣れるまでは多少気になるかもしれませんが、時間とともに気にならなくなります。
治療中でも、スポーツや楽器の演奏は普通にできますか?
たいていのスポーツは問題ありません。楽器は種類によっては慣れが必要です。
歯が動くときの痛みはどの程度ですか?
痛みの感じ方には個人差がありますが、慣れると気にならなくなるようです。
治療中に妊娠したら、どうなりますか?
すでに矯正装置をつけて動的治療をしているのであれば、妊娠しても特に差し障りはありません。
通常は臨月までは通常どおり治療を進め、来院間隔を空けながら出産準備を優先します。
矯正歯科治療を再開するのは、出産後、母子ともに落ち着いてからで構いません。
高校、大学受験を控えていて定期的に通えるか不安です。
すでに矯正装置をつけて動的治療をしているのであれば特に差し障りはありません。また、受験直前には予約を先延ばしにしてもらったり、装置の過度な調整をしないよう心がけています。