成人の矯正治療が可能な年齢とは
“矯正治療は子どもがするもの”、“40歳を過ぎたら矯正治療はできない”と勘違いされている方が多いようですが、矯正治療が可能かどうかは年齢によりません。
矯正治療が可能かどうかは、以下の判断基準に基づきます。
- 残存永久歯の数
- 歯周病の有無
- 歯槽骨の状態
残存永久歯の数
虫歯、打撲、歯周病などで永久歯を失い、ブリッジや入れ歯が入っていて、残存歯が極めて少ない状態では、矯正治療の適用外となる場合があります。
歯周病の有無について
清掃状態が極めて悪く歯石も沈着していて、歯周病が進行しているような場合は、歯周病の治療が最優先となります。歯周病治療により歯肉が改善しても残存歯が極めて少ないあるいは残存歯の動揺が基準値以上の場合は矯正治療の適用外となる場合があります。
歯槽骨、歯根の状態について
歯周病治療の結果、歯肉の炎症も無くなり残存歯の動揺も基準値以下であっても、歯が歯槽骨に植わっている長さが基準値より短いと矯正治療の適用外となる場合があります。
また、打撲や外傷あるいは先天的に歯根が基準値より短かったり吸収している場合は矯正治療の適用外となる場合があります。
お子さまの適齢期を判断する基準とは?
成人の方の場合、加齢を考慮するとなるべく早く矯正治療をスタートすることが望ましいと言えます。一方、お子さまの矯正治療の場合、スタートする適齢期は個人差があります。一概に、何歳からスタートするのがベストであるとは言い切れません。では、一体、適齢期を判断するにはどうしたら良いでしょうか。
矯正治療の適齢期、以下の判断基準に基づきます。
- 不正咬合の種類
- 永久歯への生え変わり
- 顎の成長
- 悪習癖・態癖の有無
不正咬合の種類について
- 叢生:永久前歯が生え始める7〜9歳から開始が可能です。
- 上顎前突:指しゃぶりなど悪習癖が原因であれば、4〜5歳の乳歯列から開始が可能です。
- 上下顎前突:永久前歯が生え始める7〜9歳から開始が可能です。
- 下顎前突(反対咬合):永久前歯が正常に生えてくるよう4〜5歳の乳歯列から開始が可能です。
- 交叉咬合:永久前歯が正常に生えてくるよう4〜5歳の乳歯列から開始が可能です。
- 開咬:指しゃぶりなど悪習癖が原因であれば、4〜5歳の乳歯列から開始が可能です。
- 過蓋咬合:永久前歯が生え始める7〜9歳から開始が可能です。
- 空隙歯列:永久前歯が生えそろう8歳前後から開始が可能です。
永久歯への生え変わりについて
- 乳歯列は2〜3歳くらいで完成しますが、反対咬合、上顎前突、交叉咬合、開咬の治療については物心が付き始める4〜5歳以降から開始するのが適切です。
- 7〜8歳くらいに第一大臼歯と上下永久前歯4本づつが生えてきます。叢生、上下顎前突、過蓋咬合については、この時期から開始することにより、非抜歯による治療が可能になります。
- 9〜11歳くらいにかけて第一小臼歯、犬歯、第二小臼歯の順に生え変わっていきます。 この時期から治療を開始する場合でも当クリニックの非抜歯治療法により、多くのケースが非抜歯により治療が可能です。
- 永久歯列が完成するのは、11〜13歳です。この時期以降に治療を開始する場合でも、当クリニックの非抜歯治療法により、多くのケースが非抜歯により治療が可能です。
顎の成長について
- 4〜5歳の乳歯列時期は、上下の骨格的ギャップがほとんど無いとされていますので、成長とともに骨格的な不正を生じやすい反対咬合、上顎前突、交叉咬合、開咬などは、この時期が最も改善しやすく安定しやすいと考えます。
- 7〜10歳くらいにかけては最初の成長のピークとなります。骨格的に問題のある反対咬合、上顎前突、交叉咬合、開咬などは、上下の顎の成長をコントロールする治療が必要となります。また、叢生、上下顎前突、過蓋咬合については、成長と生え変わりに合わせて顎の土台の成長を促す治療を行います。
- 11〜15歳くらいにかけては最後の成長のピークとなります。反対咬合、交叉咬合の場合は、下顎の成長の余力によっては、成長がある程度収束する15歳以降に治療が終了するようにする場合があります。逆に上顎前突の場合は、下顎の成長を積極的に促す治療を行う場合があります。
悪習癖・態癖の有無について
著しい舌突出癖、指しゃぶり、吸唇癖、口呼吸などの悪習癖については、4〜5歳の早い時期から治療を始めることが必要です。
うつ伏せ寝や頬杖などの態癖が原因のケースについても,早い時期から治療を始めることが必要です。
適齢期に矯正治療を始めるメリットとは
反対咬合、交叉咬合は、骨格的ギャップが生じないできるだけ早い時期から治療を開始するのが望ましいと考えます。その結果、下顎の過成長や歪みを予防することが可能になります。
上顎前突、過蓋咬合、開咬は、成長のピークに合わせて下顎の成長を促すことにより、骨格的ギャップの是正が可能になります。
叢生、上下顎前突は、成長のピークに合わせて、歯列の拡大、顎の土台の成長を促すことにより、永久歯非抜歯による治療が可能になります。
適齢期に矯正治療を始めないデメリットとは
反対咬合、交叉咬合は、成長のピークを過ぎると骨格的ギャップが大きくなりやすいです。
いわゆる受け口顔貌、しゃくれ顔を矯正治療だけで治すことが困難になります。
極端な場合、下顎の手術、ケースによっては上顎の手術も必要となります。
上顎前突は、成長のピークを過ぎると下顎は後退したままとなり、いわゆる出っ歯、バードフェイス(鳥貌)になります。出っ歯を治すために永久歯の抜歯が必要となりやすく、前歯の突出が改善されても下顎の後退感が改善するとは限りません。
過蓋咬合は、日常的な歯ぎしり、くいしばりにより咬む力が強くなり、全体あるいは部分的に歯のすり減りが著しくなります。矯正治療による前歯の移動量によっては、歯根の一部が吸収してしまうことがあります。また顎関節が日常的に圧迫されていて、いわゆる顎関節症を伴いやすく、症状を軽減するための治療に時間を要する場合があります。
叢生、八重歯、上下顎前突、開咬は、歯の土台のスペース不足から小臼歯4本抜歯が必要となる場合があります。親知らず(第3大臼歯)が必ずしも正常に生えるとは限らず、その場合は小臼歯4本、親知らず4本の合計8本の永久歯を抜歯治療により失ってしまうことになります。
空隙歯列は、とくに目立ちやすい上顎前歯の隙間の後戻りが起こりやすいので、歯の裏側に半永久的なワイヤー保定が必要な場合があります。
適齢期を逃さないことも大事ですが、適齢期を知ることがより大切です。矯正治療の適齢期をするために、初診相談をまずは受診ください。初診相談についてはこちらから。